海外ものづくりレポート マレーシア編

タイトル
アセアンと中国のものづくり
担 当
村林  稔

私はかつてパナソニック株式会社エコソリューションズ社で技能社員として勤務しており、マレーシアにケナフ生産工場の現場責任者として赴任しました。会社を辞めた後、マレーシアにて製造機械のセットアップと技術アドバイザーの会社を立ち上げて現在に至っています。(筆者の詳しいプロフィールは文末でご紹介しています)
ここでは私が見聞したこの地域のものづくりの現状をレポートします。

1.マレーシアは、どんな国か

東南アジアに位置するマレーシアの人口は、2013年にようやく3,000万人に達しました。(面積は33万平方キロメートルで、日本は37.8万平方キロメートルですから、日本のおよそ9割弱の広さです。)マレー系67%、中華系25%、インド系8%で構成される多民族国家です。 マレーシア1-16

マレーシアは土地面積や経済活動に対して労働人口が少なすぎる傾向にあり、政府は外国人労働者の導入を進めています。現在では、合法の外国人労働者が211万人に達しています。マレーシアの総雇用者数1,270万人に対してですから、約5人に1人は外国人ということになります。  業種別に見ますと、製造業に従事する人が35%と、一番多くなっています。マレーシアのものづくりの現場を支えているのは、外国人労働者と言っても過言ではありません。入れ替わる外国人労働者のエンドレスな教育と、担当するマレーシア人指導者の教育、そしてスキルアップが、この国のものづくりを高めていくためのキーと言えるのではないかと私は見ています。

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(出典:IDE-JETRO統計より)


2.マレーシアの人件費は

やはり気になるのはマレーシアでの労働者の賃金です。一般工の比較で見ると、日本の10分の1です。この安い人材を教育して使える技術者、技能者にすると効果的というわけです。日系の企業は、その思いで懸命に取り組んでおられると思います。しかし現実は厳しい。なかなか思うようにはいかないのです。ちなみにマレーシアの平均物価は、日本の3分の1です。 マレーシア1-4

3.マレーシアの勤怠の現実

今ではタイムカードを使っているところは少ないですよね。マレーシアで驚いたのは、8時間労働で朝8時始まりとすると、ほとんどの従業員は8時ギリギリに会社に来て、フィンガーテック(タイムカードのこと)で出勤を確認したあと、キャンティーン(社内食堂)に朝食に行ってしまいます。日本じゃありえないでしょ?10分から15分で帰って来てとりあえず仕事。10時になるとティータイム。これまた10分から15分。12時になると昼食休憩で1時間。さらにイスラムのお祈りが、その休憩の後30分くらい。15時になると ティータイムで、17時に定時となります。  つまり、実質働いている時間といえば、5時間位しかありません。実は、この時間形態は、公務員から来ていると思います。学校の先生もそうだったのでしょうね。朝礼の後に、みんなキャンティーンに行く学校を見た事があります。

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4.マレーシアの5S

政府団体も、政府系企業も、そしてもちろん日系の企業も、それぞれ5Sの推進を日本に見習ってやっていますが、内実は、写真のようなポスターを作って終わりっていうのが大半です。私が元工場の責任者をさせて頂いていた工場でもポスターまでは素晴らしいものができていました。しかし、残念ながら、ポスターから先の実際の活動が “無いに等しい” 活動です。実績報告のコーナーが寂し過ぎるのです。私はこのような状態を『マレーシア かんばん方式』と呼んでいます。(笑)

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政府系団体のポスター

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街中のポスター

5.中国の6S

中国のとある車の部品を作っている会社で見たのは、5S活動ではなく6S活動になっていました。何がプラスされているかと言うと、なんと『安全』なのです。本来『安全第一』ですから、5と一緒にしてもらってはいけないはずです。安全が軽視されています。  ちなみに現場を見てみると、安全靴を履いた作業者はゼロです。なるほど!って感じました。

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6S活動のポスター

6.すぐ折れる中国製のタップ

中国で機械に制御部品を取り付けるため、M4のタップ加工が必要になり、近くの工具屋で3.3mmの下穴用ドリルとM4のタップを2本ずつ買って来てもらいました。ドリルは切れ味が悪かったけれど、なんとか穴を空ける事ができました。問題はタップです。タップハンドルにセットして切削オイルを付けてネジを切り始めると、
“ポキッ!“ 見事に折れました。ドリル径は、本当に3.3mm?OKでした。ではと、もう1本“ポキッ!” とまた折れました。結局、このタップ、見てくれは普通のタップですが、材質と熱処理はイカサマなのです。まだまだ品質に問題有りの国です。それ以降、自分の工具箱に常にタップを入れることにしています。

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7.タイのホールソーの使い方

タイの自動車の部品を製造している会社で、既存の設備の改造をしている時のことでした。改造のために、現地のテクニシャンを何人か雇っていました。(素人を雇った訳ではありません)。その中の一人のテクニシャンに、ホールソーを使って24mmの穴を空けてくれるように依頼しました。  すると、彼が10mmくらいの大きさのドリルで、ホールソーの下穴を開けようとしているではありませんか!なんのためにホールソーにドリルが付いているのか、彼は分かっていませんでした。テクニシャンとして雇っても、100%信じる事は危険な国なのです。

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8.軍手でこまかな手仕事

私が主にアジア圏で、据付等々を行っている装置は、不織布関係のものが多いです。装置は大体幅4m、高さ10m、長さ20mくらいですが、オイルまみれだったりはせず、綺麗な装置です。組立に使うボルトはM12、M14、M16が主です。ボルト+ワッシャー+スプリングワッシャー+ナットの組合せで部品を組み立ていきます。アジアのどの国に言っても共通して言える事は、汚れる作業でも無いのに、作業者は軍手を脱ぐがないのです。  さてどうなるかと言うと、ワッシャーやナットをポロポロ落とす、落としたものを拾う・・。当然のことですが、作業が遅い。いつも見ていて、腹が立ちます。ちなみに私は、軍手をしたままボルトを組んでいくなんて器用な事はできません。

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9.スマートフォンをとるか、仕事をとるか?

どこの国に行っても気になる事は、作業中にスマートフォンをいじくっている作業者が多い事です。大半が私用で使っていると思います。作業効率が落ちるし、安全上も良くないですね。仕事をする以上、プロ意識を持ち責任感を高く持つ必要があると考えます。

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10.機械故障の原因はネズミ

タイの自動車の部品を製造している会社から、機械が動かなくなった!と連絡があり急きょ飛んで行きました。なんと、犯人はネズミです。何箇所かじれば気がすむのか?機械を作る側はネズミ対策も必要です。

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