海外ものづくりレポート2 

タイトル
アジア新興諸国ものづくり
担 当
村林  稔

 前回のレポートから1年半がたちました。現在はフリーランスのエンジニアリングの会社で、以前現場責任者を務めたパナソニックのケナフ生産工場で使っていたフランスのメーカーの繊維のリサイクルの機械を世界中に据え付けて、生産現場の電気配線、営業、稼働後の製造の指導など幅広くやっています。その会社の体制は、私のようなエンジニアがすべて一人で完結するという考え方で、ワーカーは現地の業者を手配します。扱っている機械はけっこう大きいもので、据え付けだけで一ヵ月かかります。トータルすると1現場で2〜3ヵ月の滞在になります。 
 今回ご紹介するのは、この1年半の間に仕事をした新興諸国の生産現場や生活の話です。日本では考えられない危険や非常識行動の連続です。身の危険を感じることもあります。しかし私は管理だけおこなうマネジャーにはなりたくなくて、生涯現場で働きたいと選んだこの道です。自分が今までに蓄えてきた技能、知識、経験を活かせる今の仕事が楽しくて仕方ありません。(ご紹介する現場の話は、その国の小さな企業での話ですので、必ずしもその国すべてがそうというわけではありません)
アジア 仲間たちと(左から2人目が村林氏)


(1)大丈夫かいな? (グアテマラ編)
 グアテマラはものすごく治安が悪いので、工場の守衛さんはみなショットガンを肩から下げて、各通用門と裏山を24時間態勢で警備しています。そんな危ないことが実際にあるのだろうかと心配しながら仕事をしましたが、幸い3ヵ月の滞在中に、事件は起こりませんでした。腰にはスペアの実弾を装備しているのもわかります。
  アジア ショットガンで警備する守衛

 ちなみに、町の商店はこんな感じで、商品はみな鉄格子の向こうに置かれていて、鉄格子の間からやり取りしないと買い物ができません。言葉が通じないと大変です。英語が通じなくて現地語はスペイン語になります。こんな小さな商店でも危なそうなところでは、ショットガンの警備員がいたりします。一人で町中を歩くのは怖いです。
アジア 買い物も鉄格子越し


(2)人海戦術? (グアテマラ編)
 これは生産機械を運んでいるところです。フォークリフトを手配する連絡ができていなくて、工場中から人が集まってきて、コンベアを動かしたのです。グアテマラ式機械の運搬といいますか、私もこんなシーンは初めて見ました。作業員は全員若いですね!20〜25歳そこそこの若い人ばかりなので、日本から見ると羨ましい限りです。次の日にはようやくフォークリフトをレンタルしてくれました。ちなみにこの会社はリサイクル品の輸入販売の会社です。
アジア コンベアを持って運ぶ


(3)超過酷な作業環境 (メキシコ編)
 写真の大きな機械が、私が取り扱っている反毛(ハンモウ)機です。くず糸やくず布を材料にして再生する機械です。だいたい時間当たり1〜1.5トン処理します。この工場で作っているのはベッドマットレスと自動車の内装材です。
アジア 反毛機

 2枚目の写真のように、図面を広げて電気配線をつなぐ作業をしていますと、1本つないで2本目をつなごうとしたときに、なんと置いている図面にダストが積もって見えなくなるのです!ここまでひどいのは初めての経験でした。

アジア 図面が見えなくなる

 保全マンは左から二人目の男性のようなスタイルをしています。格好はヘルメットをかぶり、防塵マスクをつけ、保護メガネをかけているのですが、ホコリは吹き飛ばすしかないのです。さらに暗い場所も多いので懐中電灯も手にします。作業者はこれが普通なのでしょうね。人間、慣れってすごい! アジア 左から2人目が保全マン

(4)勘違いしてない? (トルコ編)
 トルコの設備投資は今とても盛んです。私が行っていた会社は、鍵を作る会社です。1台トータル10億円くらいの機械ですが、3社あって各社とも毎年1台購入してもらっています。トルコに入ると先ず聞かれるのは、あなたは電気屋か?機械屋か?ということです。私は全部やりますと答えるとびっくりされます。トルコでは完全に分かれているのです。エンジニア、テクニシャン、機械屋、電気屋、すべて分かれています。
 ある日、私のまわりで暇そうにしているエンジニアがいたので、搬送用のボルト(M10)を外しておいてくれと言ったところ、彼はなにも作業に取り掛かりません。なぜやらないのか?と聞いたら、今電話でテクニシャンを呼んでいるので待ってくれという答えです。すごく簡単な作業で、そばに工具が置いてあるのに、です!トルコではエンジニアは工具を使う仕事はしないそうです。何か大きな勘違いをしているようですね!

アジア エンジニアですか?
アジア テクニシャンですか?

(5)何すんねん! (タイ編)
 タイでの出来事です。私がトルコに到着した日の夜中に携帯電話が鳴りました。トルコに来る前に滞在していたタイの顧客から、機械のトラブルがあったとの連絡でした。状況から判断して私はPLCの通信異常だと考え、チェックポイントを連絡しましたが、制御機器の保全レベルが低い会社のため、問題箇所を発見できませんでした!
 結局私がトルコに行っている間、修理できないという事態になりました。そこは日系企業なのですが、その日本人の社長が、タイで同じフランスの機械を持っている会社が取り引きしている保全係を呼んできたのです。でも結局は最終的に全然動かないうえに、いい加減な修理をしてしまったものですから、修理どころか他の制御部品まで多数故障させてしまったのでした。
 2ヵ月後、私がもどって通信ケーブルの異常箇所を見つけて、部品をかき集めて、2日で修理しました。その企業にとってみれば、2ヵ月機械が動かないし、部品はほとんど交換しないといけないしで、大損を被ることになりました。
 新興国に共通して言えることは、“知ったかぶりして触りまくる”ことです。知識も経験もないのに、「できる」と言います。そして出鱈目に触りまくります。自分の仕事に責任を持って、もっと勉強しなはれ!と言いたいです。

アジア 修理ミスでショートした回路

(6)聞く耳なし! (中国編)
 中国は4千年の歴史を持つ国(五千年という人もいます)ではありますが、人の言うことは一切聞きません。物を右から左に運ぶのにフォークリフトを使った方がいいと言っても、まったく聞きません。すべての作業指示に“イエス”はなく、ただ言い換えて作業者に伝えます。すべて自分が仕切らないと気が済まないのでしょう。とにかく大声で自分のことを主張するだけで、コミュニケーションになりません。勘弁してほしいです。

アジア 耳はどこに付いてるの?

(7)外国人労働者ばっかり (韓国編)
 新興国ではありませんが、最近韓国で仕事をして驚いたことです。以前は外国人の労働者はほとんど見かけなかったのですが、今回は作業者が片言英語で話しています。あれっ?と思ったら、この会社の従業員50人くらいのうち、30人くらいはカンボジア人でした。みんなマスクをしているので、最初は気がつかなかったのです。
 韓国とカンボジアは昔から歴史的に親密な関係にあるためで、どこの会社でもそういう状態のようです。カンボジアなら給料が月2万円のところ、韓国では月20万円くらいもらって出稼ぎをしているわけです。彼らはとにかく文句も言わずに器用によく働く若者たちでした。

アジア 韓国人と思いきやカンボジア人

(8)信じてはいけない? (インド編)
 インド人に首振りをご存知ですか?インド人はよく首を左右に振ります。実はこれ、“イエス”の意味なんです!でもこのイエスも信じてはいけません。半分はイエスではないのです。
 取引先が購入した機械の通信に使おうとしたEthernetケーブルの仕様が間違っていたので、再購入の依頼をしたところ、インドでは入手できないからフランスの会社から購入したいと言います。私は「運送費が高くつくのに、本当に購入するのか?本当に現地調達はできないのか?」と繰り返し尋ねても担当者は首を振っていました。つまりイエスです。念のため、見積書だけ取り寄せたところ、高価格すぎると購入を止めてしまいました。信じてはいけません!
 インド人はけっこう英語をしゃべるので理解していると思ってしまうのですが、実際理解しているのは50%ではないかと思います。インド人の首振り、まったく信用できません!

アジア インドの首振り人形

(9)安全軽視 (インド編)
 これは作業上で制御用のダクトをサンダーで切断しているところです。裸足にスリッパは当たり前です。保護メガネなどあるわけがありません。おまけにワーカーが子連れで仕事に来るので、現場には小さな子どもが何人も走り回って、危なくてしかたがない、という状態になります。

アジア 火花が熱くないの?

アジア 走り回らないで!

(10)とにかく触りまくる (共通編)
 操作盤に電源が入ると、そうとうな数の人がのぞきに集まります。1時間でも2時間でも平気で見ています。仕事が無いんかいなと思います。そして席を外そうものなら、誰彼ともなく操作盤を触りまくります。危なくて仕方がありません。人が使っているパソコンの後ろに立ってずっと見ていることもしょっちゅう。目を離すと、人のパソコンを使っています!恐るべし!

アジア みんな仕事せんでええの?

アジア 勝手に触られるとあぶない!

(11)判じて聞け (共通編)
 私は小さいときに親から“判じて聞け”と教えられました。1つ言われたら10必要なことを考えろ!という訳です。例えば、父親に“タバコ取って”と言われれば、ライターと灰皿も必要ですよね。新興国で仕事をしていて、こんなことができる人は皆無。1から10まで言って、全部確認する必要があります。全部できているなんて一度もありません。

アジア 考えてるの?

(12)行き当たりばったり (共通編)
 新しい工場なんかを作っている時、ここ何回掘り返しているの?と聞きたくなる光景をよく目にします。私がいた1ヵ月の間に3回掘り起こして、その度に新しい配管を埋めていました。何を、どの順番で埋設するのか?排水管は?設計図は?計画書は?そんなものは見たことがありません。まさに行き当たりばったり。仕事を終わらせたいと本気で思っているのでしょうか?もしかしたら仕事を作っているのかも?

アジア また掘り返してる

(13)“蚊”に注意! (共通編)
 今一番怖いのは蚊です。デング熱、ジカ熱、マラリアなどを媒介します。蚊は制御盤が好きなようで、制御盤のまわりに集まってきます。気をつけていても刺されてしまいます。デング熱は刺されると死ぬほど痛いらしいです。そして二度目に刺されると命を落とす危険があります。小さな蚊ですが、決してあなどれません。
 ちなみに2015年12月5日時点でマレーシアのデング熱患者数は死亡者301人を含む11万1285人でした。これは、前年の同時期の9万5694人と比べて16.3%上回っています。2015年11月29日から12月5日の1週間に2119人のデング熱患者が報告されました。

アジア

アジア

PAGE TOP